■[医学]衛生仮説〜不潔な環境がアレルギー性疾患を予防する
先進諸国において、気管支喘息や花粉症などのアレルギー性疾患が増えているのは、まぎれもない事実である。アレルギー疾患の発症そのものに遺伝的な要因が関与しているのは確かだが、疾患の「増加」については、遺伝では説明できない。複合的な環境要因が関与していると思われるが、衛生仮説といって、「環境が衛生的になり子供のころに感染する機会が減ったことがアレルギー性疾患の増加の原因である」という学説がある。以下で紹介する子供を花粉症にしないための方策は、衛生仮説に基づく。
■子どもを花粉症にしないための9か条(医療介護CBニュース)
十代の鬱病を切断
2月23日に横浜市の理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、谷口センター長は「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演。この中で、▽生後早期にBCGを接種させる▽幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる▽小児期にはなるべく抗生物質を使わない▽猫、犬を家の中で飼育する▽早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす▽適度に不衛生な環境を維持する▽狭い家で、子だくさんの状態で育てる▽農家で育てる▽手や顔を洗う回数を少なくする―の9か条を紹介した。
衛生仮説そのものは、記事でも紹介されているように多くの状況証拠によって支えられており、「ほとんど確か」と言っていいレベルである。それはそれとして、具体的な方策が有効かどうかはまた別の話。生後早期のBCGを接種については、定まった評価はないようだ。堀口茂俊によれば、
ヒトでの幼少期のBCGワクチンがその後のアレルギー疾患の発症を予防するかどうかについては報告が少なく、また意見も割れている。
高血圧と利尿薬
とある。「生後早期にBCGを接種させる」ことを挙げた理由には、開発しているスギ花粉症ワクチンと関連するからであろう。同じく堀口によれば、
以上の結果をふまえて理化学研究所と千葉大学免疫学教室ではBCG接種と血清IgE変動について小規模臨床試験を行った。スギ花粉症ボランティア6名に対し、乾燥BCGワクチンを初回40mg/mL、2回目以降8mg/mLの濃度で3か月ごとに皮下注射した。血清IgE値、スギ特異的IgE値をモニターしたところ、いずれの患者からも2回目接種以降に血清総IgE値あるいはスギ特異的IgE値の低下をみた。
そこで、BCG接種が花粉症に効果があるかどうか、大規模検証に入った。千葉大学免疫学講座と理化学研究所、および私たち千葉大学耳鼻咽喉科で1年間150名規模のプラセボ対照ランダム化試験を2004年度から2年間行っている。現在臨床症状および資料の解析の集計を行っている最中であり、結論が待たれる。
腎不全とめまい
理化学研究所がBCG接種と花粉症の臨床試験に関与しているんだね。プラセボ対照ランダム化試験の結果は、探したけれど見つからなかった。個人的には、小児のアレルギー性疾患の予防と、成人になって発症したアレルギーの制御は異なり、BCG接種でそう簡単に花粉症が治るとは思えない。「農家で育てる」のが9カ条の一つに入っているのは、農家で育てたらアレルギー性疾患が減るという疫学調査によるのだろうけど、Riedlerらによると、その効果は1歳以下のときの暴露に限られるようだし。ただ、BCG接種が大人の花粉症に効くかどうかは、やってみないとわからないので、早いとこ結果を発表して欲しい。
「幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる」については、それほど荒唐無稽な話ではなく、いくつか効果 があったとする無作為対照試験があり、「あまり意味ない」とは一概に言えない。「小児期にはなるべく抗生物質を使わない」は、花粉症のなりやすさとは無関係にその通り。ただし、必要なときは使うべきであるのは言うまでもない。
「猫、犬を家の中で飼育する」「早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす」「適度に不衛生な環境を維持する」「狭い家で、子だくさんの状態で育てる」は、そういう疫学調査があるのは確か。介入試験があるかどうかは知らない。「手や顔を洗う回数を少なくする」というのは、わからない。個人的には、手洗いはしたほうがよいと思う。現実的には、「過度に衛生的にならないよう、ほどほどに」というところに落ち着くだろう。
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